Chap-21. ArcoLinux を試用

 初稿 2020-05、 更新 2024-09

 これまでは Arch 系は割合とUNIXギークっぽい使い方に向いていると思っていました。そう信じて疑いませんでした、笑。
が、Slackware-current でローリングリリース系を長期利用するとバイナリー互換性が変化していくことを強く認識しました。
ようするに自分で野良コンパイルしたものが、ある日急に動かなくなったりします。動かなくなったら再コンパイルして動くようになると想像できますが、面倒です。いつ動かなくなるかハラハラしながら使うのは億劫ですし。
2023 年秋以降は「ローリングリリース系を UNIX ギークっぽく使うのはいささか無理がある」と考えるようになりました。
固定リリース系の Debian-stable、Ubuntu-lts、Slackware-stable 版だと同一メジャー番号の間は概ねバイナリー互換性が確保されています。
野良コンパイルには当然そっちの方が楽です。
それで 2023 秋以降は、ローリングリリース系を UNIX ギークっぽく使うレボをやめています。
ローリングリリース系と野良コンパイル作業の相性については、Chap-34. Sec-23 に多少詳しく書いています。



 *Linux の使い方についてかねてより私は以下の3つの視点で見てきました。( Chap-26. 参照)
しかし、このディストリの場合は上記理由により原則として c. を対象にチェックします。一部 b. も試しています。(一部だけ)


 *また、セキュリティ上の視点では「セキュリティやバグのフィックスをいつ誰がやっているか?」の視点で見ています。(Chap-26-2. 参照)


Sec-1.インストール
Sec-2.日本語入力の設定
Sec-3.インストール後、最初に試すこと
Sec-4.Windows 代替(ATW)としての利用
Sec-5.プリンタ及びスキャナの設定
Sec-6.全体を通しての印象




Sec-1.インストール

 インストーラは Calamares です。ハードウェア認識に優れていて、しかも扱いの簡単なインストーラです。
なお、お試しは AMD ryzen 3400G + B450 系マザボ という構成です。CPU 内臓の GPU(Radeon) を使います。ネットワークには intel 1000CT を使います。
DE は xfce にします。
かって arcoLinux はインストール用 ISO がものすごく多種類ありました。が、今日では大分整理されたようです。今回は arconet という ISO を使いました。
インストール中にチェックしたのは最新系のカーネルを選び AMD-ucode を選んだシーンと、XF86 の選択及び xfce とウィンドウマネージャ系を選んだシーンだけ。後は何もチェックせずにインストールしました。
最新系カーネルを選ぶと Linux-zen カーネル利用になるようです。




Sec-2.日本語入力の設定

 今回は xfce なのでフレームワークとして fcitx5 を使ってるものの中から fcitx5-mozc を使います。
fcitx5 の関連パッケージを適当に入れます。


# pacman -S fcitx5 fcitx5-mozc fcitx5-configtool fcitx5-gtk fcitx5-qt

次に $HOME/.bash_profile に以下の 3 行を書き加えます。
im 指定するところは fcitx でも fcitx5 でもどっちでもオケです。
「セッションと起動」については fcitx5-mozc をインストールすると、自動的に fcitx5 を立ち上げるように設定がされました。


export GTK_IM_MODULE=fcitx
export XMODIFIERS=@im=fcitx
export QT_IM_MODULE=fcitx

以下、リブートすると ctrl + space で IM のオンオフが制御でき mozc で日本語変換出来ます。





Sec-3.インストール後、最初に試すこと

 b. 利用のためのチェックの一部です。
ここでは、一応以下の項目を軽くチェックします。

 従来は上記に加えて rc.local関係と各種サーバソフトやプログラミング言語の野良コンパイルについても、説明していました。
rc.local はデーモンを自分でコンパイルインストールした後に使うと思います。が、arcolinux は野良コンパイル利用に向かないので rc.local は使わないでしょう、多分。
また同様の理由で、サーバソフトや開発系も野良コンパイルせずにパッケージにあるものを使ったほうが良いと思います。なので野良コンパイルの説明は無しです。

以下、順に試していきます。



1.と2. IPアドレスとリゾルバーの設定

 NetworkManager を使ったやり方です。GUI でも CUI (サーバ的)でもNetworkManager を使っています。CUI なら nmcli コマンドで管理します。そのコマンドの使用例は Chap-7. 見てください。



3. パケットフィルタは普通に使えるか?

パケットフィルタは問題なく使えます。オケです。nftables 調子良いです。



4. デーモンのコントロール

 systemd のディストリの標準的なやり方です。Debian と同じです。



5. シリアル回線使ってルータ管理できるか?

uucp パッケージをインストールすれば cu コマンドが使えるはず。ユーザを uucp のグループに入れます。
が、うまく行きませんでした。今回、USB-RJ のケーブルを使ってルータに入ろうとしました。がケーブルをつないだ途端にハングアップします。キーボードから何も受け付けなくなります。うまく行きませんでした。
もしかすると rc232c を増設するボードを使えばうまくいくかもしれませんが試していません。

なお、2024 初夏時点だと Ubuntu-24.04-LTS と Slackware-15 では USB-RJ でも問題なく CU が動きます。Debian-12-stable では arcolinux 同様にダメでした。






Sec-4.Windows 代替(ATW)としての利用

 Windows 代替(ATW)として使いやすいかどうか、私の印象を少しだけ書いておきます。ここのイメージはあまり OS 本体をいじまわしたりせず、各種アプリを使うイメージです。いわゆるパソコン利用。


ブラウザ
 パッケージ版の firefox がうまく動作します。
去年試したときに flatpak 版はうまくいきませんでした。なので今回は flatpak 系は試していません。


メーラ
 Sylpheed が yay でインストール出来て使えます。が yay 版はバイナリー互換性が変化していくと動かなくなる恐れがあります。
パッケージ版の Evolution あたりを使った方が無難だと思います。

オフィス
 パッケージ版で Libre-Office が使えます。全然問題なしです。libreoffice-still-ja を入れれば本体も関連で一緒に入ります。

画像ソフト
 パッケージ版で Gimp が使えます。問題なく動きます。十分良好です。

DVD 再生
 pacman で vlc と libdvdcss パッケージを入れます。それで市販DVDが視聴出来ます。以前は明示的に libdvdcss を指定しなくても自動で入った気がします。今回は明示的に指定してインストールしました。
関連ですが、パッケージ版で brasero も動きます。

更新やパッケージ・インストール
 CUIで # pacman -Syyu で更新です。パッケージ・インストールは pacman -S hoge です。

以上です。





Sec-5.プリンタ及びスキャナの設定

 プリンターの設定は Chap-32.に移動しました。ArcoLinux は Chap-32. の Sec-4. と Sec-5. の方法で対応出来ます。
ただし、野良コンパイル前提なのでそのうちバイナリー互換性変化の影響から動かなくなるかもしれません。いつまで順調に動くのか、予想がつきません。
動かなくなったら再コンパイルすれば動くようになると思いますが、この点は未確認です。

スキャナは Wifi 経由で問題なく使えます。こっちはパッケージソフトだけで動くので特に問題無いと思います。





Sec-6.全体を通しての印象

 このセクションは私の独断的、個人的な印象のみです。

*まず使い方の3つの視点から見た評価です。
a. の利用について・・・・・・・(対象外)
b. の利用について・・・・・・・一部のお試しでした。シリアル回線の問題以外は大丈夫でした。
c. の利用について・・・・・・・とりあえずプリンタは動きますが、いつまで動くか予想できません。後はパッケージ版で概ねうまく動きました。

*次にセキュリティー上の視点からの評価ですが、Chap-26-2. に示すカテゴリ3(カテゴリ2の派生)なので問題は無いだろうと思います。

 Arch系ローリングリリースのディストリは設計思想が洗練されていて、パッケージも多くあります。比較的、安定感も高いです。良好だと思います。
その一方でローリングリリースであるが故に、使い勝手はやや制約されます。
個人的好みから言いますと、リビングルームでの普段使いには割合と向いていると思います。その一方でサーバルームで使うのは LAN 内でも DMZ のサーバでも控えたいです。(そこは固定リリース系モデルを選びたい)








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