これまで各チャプターで個別のディストリについて、試したことを書いてきました。
言ってみればこれまではそれぞれの「木」を見ていました。ここで一旦視点を上空に上げて、「森」を眺めてみようと思います。
つまり、俯瞰的に眺めてみたいです。
書くことは個人的志向とか趣味的な内容に、少しだけ世間の評判を加えています。
以下の記述は、2020-08-08 時点が初稿です。
このチャプターは性格上、時期的に多少変動します。常に少しずつ手を加えています。
Sec-1.UNIX の特性・特徴
Sec-2.僭越ながらウェブサイト管理人の好み
Sec-3.前のセクションを踏まえて、各ディストリごとに短いコメント
Sec-4.その他のディストリ
このウェブサイトでは、よく「UNIX」という言葉を使っています。定義は考えません。定義から話なんて、できっこありませんしね。そのため、UNIX 的だと思っている事柄を羅列していきます。そうやって私が UNIX に持っているイメージを説明します。
UNIX って 1969 だか 1970 年だったかに出現したOSでしたっけ・・・。
特徴のほとんどは、資金不足のなかでスタートしたプロジェクトだったことに起因しているらしい、笑。万事塞翁が馬。
自分が特にUNIX系OSで気に入っている部分は、上記のうち大まかに言えば 1. 2. 6. 8. 9. あたりです。
なお UNIX のうち、BSD 系は PC の世界でなんとか残っていますが System-V 系についてはすでに事実上消滅しているようです。
wiki で HP-UX、AIX 等を検索すると少しずつアップされているように見えるのですが、一般の話題になることはありません。古いシステムで機器更新のときに限り重要があるのかなあ・・・などと想像しています。そんな具合なので私の理解は「System-V 系は事実上消滅」です。
見る視点です
コミュニティや企業サポートの安定性や継続性(長続きしそうなのか、どうか・・・とか)は判断が難しいです。良いと思っていた CentOS があっさりダメになった例もあります。SUSE は身請けの企業がよく変わって一抹の不安があります。コミュニティは概して合従連衡や仲違いを繰り返すし、継続性は予測がつきません、笑。
なので組織の安定性や継続性は評価項目から除外しています。実際には Debian のように長続きしているコミュニティは高評価できます。Arch Gentoo Slackware 等も組織が長持ちしていて良好です。
なお、基本的に UNIX-Room なので UNIX Geek っぽく OS をいじり回す方向で考えます。特に(a)と(b)はその方向です。
ギークっぽくいじり回すこととリリースモデルの問題点は Chap-34. Sec-23. Sec-24 に書いています。
2024-05:補足 2024年4月頃に xz の関係でセキュリティー問題が発生しました。詳しく調べたことはありませんが systemd の機能を悪用して ssh にバックドアを仕込むものだったようです。
かねてから systemd はブートローダ以外に余計なことをやりすぎるとの批判がありましたが、今回はその批判が的中したようです。
systemd が登場して既に10年前後も経過し個人的には「もうそろそろ良いだろう・・・」なんて考えていたので、自分が思慮不足だったなあと感じています。
ただし、だからといって今すぐ systemd を採用しているディストリの使用をやめようとまでは、現時点では考えていません。あまり良くない意味で、しばらく様子見又は模様ながめです。
重要視している点です
こんな感じで、ごく常識的な点を重視しています。
(a) 利用のためのディストリの好み、またはお勧め
「CUI のサーバ状態」「ギークっぽくいじる」と条件をつけると Debian-stable、Ubuntu-lts 、Slackware-15.0、SUSE(leap) になると思います。
Arch も優れたディストリですがいじり回す利用には向かないかもしれません。
なお、systemd フリーにこだわるなら Slackware か Devuan くらいが良さそうです。自分はそこまで systemd フリーにこだわりませんが・・・・
(b)利用のためのディストリの好み、またはお勧め
本能的に(a). と同じものにしたい気分です。そうなると Debian-stable、Ubuntu-lts、Slackware-15.0、SUSE(leap) 。systemd フリーなら Slackware か Devuan くらい。
もしも (a). と同じでなくても良いならば (c). に上げるもののうち固定リリース系ならどれを選んでも大丈夫でしょう。
(c) 利用のためのディストリの好み、またはお勧め
個人的に「良さそう」とか「他人におすすめ出来そう」と評価してるのは
*Debian系 ・・・・・Debian-stable、Devuan、Sparky、MX、Peppermint 等いろいろ
*Ubuntu系 ・・・・・Ubuntu、Kubuntu、Xubuntu、Neon、Pop、Mint 等いろいろ
*SUSE(leap)・・・・・本家SUSE
*Arch系 ・・・・・・Arch、EndevourOS、ArcoLinux 等いろいろ
等です。
(c). は野良ビルド等はやらずにパッケージ利用前提で考えています。が、人によっては盛んに野良ビルドやることもあるでしょう。その場合は、ローリングリリース系よりも固定系が良いと思います。
その他
・特に世間で人気のArch 系について一言・・・Arch 本体はローリングリリースの理念に忠実です。上流側の更新を素早く入れることがローリングリリースの本来の姿勢だと思います。このディストリはそういった理念に忠実に行動していて、好感が持てます。wiki も参考になります。
Arch のリポをそのまま使っているタイプの派生も、上記の意味では大丈夫だと思います。
ただ、残念ながら私のように野良作業中心にガチャガチャいじり回すタイプとは、相性が悪いです。(Chap-34. Sec-23. Sec-24. 参照)
*** Debian Ubuntu 系 ***
Debian-stable
基本的にセキュアかつ安定性が高い(systemd 採用の問題点は保留、以下のディストリも同じ)。堅牢。ギークにも受ける。ネット上の高度な情報も豊富。
派生ディストリへの支援等も積極的らしい。社会貢献度が高くて、世の為になるディストリ。敬意を感じます。
プロプラ系やコーデックへの対応について、bookworm(12) でやっと前進がありました。良いことです。
Ubuntu(固定版)
言わずと知れた Linux 界の巨人。有名。全方位に優れている。初心者向けとの評判だが、開発やサーバ系も十分にいけそう。
DE が気に入らないなら、対象を「Ubuntu 系」に拡大すれば KDEplasma、Xfce、LXQT 等もある。派生ディストリの数も多くて、選び放題状態。
ただし近年は snap を強く押し付ける傾向があり、ギークにはウケなくなっているように思う。CUI のサーバまで snap を組み込んでいるのはどうかと思います。
MXLinux
Dirtrowatch No.1 のディストリ。使い易い。コーデック系にも積極的。ノートパソコンとの相性も基本的に良好です。ただし近年は本家 Debian が nonfree-firmware をデフォルトで入れるようになってきた。以下のも含めて派生ディストリは全般に本家に対する優位性が薄れていきそうに思う。
MX は systemd フリーも選べるのでそこを気にするユーザにはありがたい存在かもしれない。
Mint
Ubuntu派生で本家より人気のディストリ。安定しているし使い易い。コーデック系には本家よりも積極的。LMDE (Debian ベース版)もしぶとくやってるようです。
ここに書くコメントは少ないけれど全然問題のない良好なディストリと思います。
Devuan
Debian without systemd が売りのディストリ。安定しているし良好。systemd free なので今回のようなセキュリティ問題が発生すると人気が上がるかもしれない。
Sparky Linux (stable)
Debian 派生。コーデック系へも積極対応していて、Debian 代替+アルファの要素が強いディストリ。使いやすくノートパソコンへもインストールしやすい。MXLinux と似た立ち位置に見えるが、人気面では大きく水を開けられている。使ってみて、良好な出来栄えの割には人気が無いと思う。
Peppermint
2022-05 時点でDebian派生に変わりました。前は Ubuntu 派生。
インストーラが Calamares なのでノート PC でクセのあるヤツ(Debian のインストーラだとうまく入らないヤツ)にも入れやすいです。Debian 代替+アルファ。
Sparky と同様。良い出来栄えのわりに全然人気が無い。何故かは分かりません。
** RedHat Fedora 系 **
AlmaLinux
Redhat のクローン。基本は業務系OSとかサーバ系OS。セキュア、安定性、堅牢性が素晴らしい。
ネット上の高度な情報も豊富。
アプリケーションもひと工夫すれば増やせるようなのでデスクトップも意外とイケル。ただし RedHat の方針に影響されやすく、存続が懸念される。
現時点では OpenELA などに期待です。
ただし「数年程度使えれば良い」と割り切るなら、これらの RedHat クローンは十分アリだと思います。
Fedora
正規の GNOME 版及び Spins から LXDE 版と Xfce 版を入れてみたがいずれも安定していて良好。
アップデートでも問題は発生しない。パッケージもマアマアある方。プロプラ系は排除していない。コーデック系には消極的。対応は出来ます。
3ヶ月ほど更新の安定性を継続してチェックしましたが、問題なかったです。全体としてレベルは高い。
ただしサポート期間やバージョンアップのサイクルが短すぎるのでせわしい。
** SUSE 系 **
openSUSE(leap)
アップデートは安定していて問題を生じない。
パッケージソフトもそれなりに沢山ある。プロプラ系は排除していないが、コーデック系には消極的。対応は出来ます。
今の leap は SLE がベースなので良さそうです。
Gecko
事実上、メンテが止まっています。このコミュニティは「SpiralLinux を使ってくれ」という姿勢のようです。当然、いまこのディストリはおすすめ出来ません。
** Arch 系**
Arch Linux
思っていたより安定・堅牢です。プロプラ系やコーデック系への対応も良好。使いやすい。
インストールが面倒なのは減点項目です。プリンター利用も設定がやや面倒。
それ以外は良好です。
ArcoLinux
マイナーなディストリだが割合と使いやすく安定している。コーデックにも積極的です。プリンタを動かすのが、面倒。
ハードウェア対応は良い意味でデリケートさがなくて堅固な印象です。出来栄えが Arch に似ている感じです。見た目(外見)がやや特殊なのは簡単に調整・修正できます。
EndeavourOS
Arch の派生ディストリ。
安定しています。リポも安定しています。プリンタを動かすのは面倒。人気急上昇中。
Manjaro
ハード対応にちょっとクセがありますが、人気のディストリです。
プリンタを動かすのが面倒。
更新を一回か二回送らせて安定化を図る方針で運営されているらしい。しかしその方針はセキュリティ上はまずいと思います。
ローリングリリース系は野良ビルドが好きな人には向いていないと思います。
** その他 **
Slackware-stable、Salix
2024-10
Salix は更新が適宜なされているのかどうか、チョイ不安。気のせいかもしれませんが、あまり活発には見えません。
また、2024-10 時点で Slackware を新規インストールすると Salix から flatpak を移植することが出来ませんでした。
2024-10 時点でSlackwre で flatpak を動かすための別の手段はあります。(alien-bob)
Slackware の (c) 系を使いやすくしようと努力するのは、結構しんどいです。時期によって出来る方法・手順等が変わります。
Clear Linux
Intel 製の Linux。高速。仕立て方には特徴(クセ)がある。パッケージの品揃えもサーバ系ソフトは独特。
ただし、flatpak サンドボックスが不安定なことがあります。これは時期によります。
このディストリは時たまおかしくなると感じます。長期的に安定運用出来るか、ちょい不安。多分、AMD のマシンだと相性は良くなさそう。
また、ローリングリリースなので野良ビルドを繰り返すような使い方には向いていないと思います。
上記以外のディストリで、ちょっとだけ試してみてすぐにやめたディストリとか、試してみようという戦意が喪失したディストリです。
つまり、良いとか悪いとか、好みに合うとか合わないとか、そんな判定以前に試用をやめたディストリです。
PCLinuxOS
こっちはベスト10の少し下だけど人気がありそうです。そもそも以前に、「次は PCLinuxOS 試してみよう」なんてウェブサイトに書きました(汗)。が、撤退です。
ようするに、全般的に分かりにくいです。
elementary、Zorin
こっちはインストール用のISOをダウンロードする画面で、撤退です。
いきなり「あんた、幾ら出す?」って画面です。いや、あれを見てなお「俺はただで使わせてもらうぞ」って言いにくいです。
Distrowatch を見ると「free」って書いてあるので無料が基本だとは思うんですけど・・・・
なんとなく、そこで気後れして試用は諦めました。ちょっと、近づき難いディストリです(汗)。
自分が常用するディストリだと寄付を心がけていますが、一時的お試しではそこまでやる気がありません、汗。
以上です。
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