Chap-26. 各種ディストリを試してみた感想

 これまで各チャプターで個別のディストリについて、試したことを書いてきました。
言ってみればこれまではそれぞれの「木」を見ていました。ここで一旦視点を上空に上げて、「森」を眺めてみようと思います。
つまり、俯瞰的に眺めてみたいです。
書くことは個人的志向とか趣味的な内容に、少しだけ世間の評判を加えています。
以下の記述は、2020-08-08 時点が初稿です。

 このチャプターは性格上、時期的に多少変動します。常に少しずつ手を加えています。



Sec-1.UNIX の特性・特徴
Sec-2.僭越ながらウェブサイト管理人の好み
Sec-3.前のセクションを踏まえて、各ディストリごとに短いコメント
Sec-4.その他のディストリ




Sec-1.UNIX の特性・特徴

 このウェブサイトでは、よく「UNIX」という言葉を使っています。定義は考えません。定義から話なんて、できっこありませんしね。そのため、UNIX 的だと思っている事柄を羅列していきます。そうやって私が UNIX に持っているイメージを説明します。
UNIX って 1969 だか 1970 年だったかに出現したOSでしたっけ・・・。

特徴のほとんどは、資金不足のなかでスタートしたプロジェクトだったことに起因しているらしい、笑。万事塞翁が馬。
自分が特にUNIX系OSで気に入っている部分は、上記のうち大まかに言えば 1. 2. 6. 8. 9. あたりです。




Sec-2.僭越ながらウェブサイト管理人の好み

 見る視点です。

 視点a.はもちろんインターネットサーバイメージ。視点b.はUNIX系をイメージしていて、視点c. はWindowsっぽい使い方をイメージしています。

 コミュニティや企業サポートの安定性や継続性(長続きしそうなのか、どうか・・・とか)は判断が難しいです。良いと思っていた CentOS があっさりダメになった例もあります。SUSE は身請けの企業がよく変わって一抹の不安があります。コミュニティは概して合従連衡を繰り返すし予測がつきません、笑。
なので組織の安定性や継続性は評価項目から除外しています。実際には Debian のように長続きしているコミュニティは高評価できます。Arch Gentoo Slackware 等も組織が長持ちしていて良好です。

 なお、基本的に UNIX-Room なので UNIX Geek っぽく OS をいじり回す方向で考えます。特に(a)と(b)はその方向です。
ギークっぽくいじり回すこととリリースモデルの問題点は Chap-34. Sec-23. Sec-24 に書いています。





(a)利用のためのディストリの好み、またはお勧め
 「CUI のサーバ状態」「ギークっぽくいじる」と条件をつけると Debian-stable、Ubuntu-lts 、Slackware-15.0 になると思います。
Arch も優れたディストリですがいじり回す利用には向かないかもしれません。




(b)利用のためのディストリの好み、またはお勧め
 基本的にここも (a) と同じだと思います。 Debian-stable、Ubuntu-lst、Slackware-15.0 。




(c) 利用のためのディストリの好み、またはお勧め
 個人的に「良さそう」とか「他人におすすめ出来そう」と評価してるのは
*Debian系 ・・・・・Debian-stable、Sparky、MX、Peppermint 等いろいろ
*Ubuntu系 ・・・・・Ubuntu、Kubuntu、Xubuntu、Neon、Pop、Mint 等いろいろ
*Arch系 ・・・・・・Arch、EndevourOS、ArcoLinux 等いろいろ
*Slackware系・・・ Slackware-15.0 ??
等です。

 上2つはいじり回す利用でも、いじらずに素直にディストリパッケージを使う利用でも、どっちでも行けると思います。(a)メインでも、(b)メインでも、(c)メインでもいけると思います。安定堅牢セキュリティもオケだし、パッケージはものすごく豊富だし。

 Arch 系はいじらずに使った方が良さそうです。ローリングリリースは野良ビルドや外部バイナリーを無理やり突っ込むやり方には向かないと思います。AUR でパッケージを入れても長期的に安定利用できるかどうか分かりません。

 slackware-15.0 はパッケージが相当に少ないので野良のビルドやインストールをしたほうが良いと思います。それが嫌なら (c) 系利用は向かないです。また、仮に頑張っていじっても (c) 系の使い勝手は Debian 系、Ubuntu 系、Arch 系には及ばないと思います。そこは我慢、笑。なので (c) でおすすめ出来るかというと微妙です。
slackware-current は (c) 系パッケージが少なくて、しかもローリングリリースであるためいじり回すには向いてない。そもそも存在自体が微妙です。







Sec-3.前のセクションを踏まえて、各ディストリごとに短いコメント

*** Debian Ubuntu 系 ***

Debian-stable
 セキュアかつ安定性が高い。堅牢。ギークにも受ける。ネット上の高度な情報も豊富。
派生ディストリへの支援等も積極的らしい。社会貢献度が高くて、世の為になるディストリ。敬意を感じます。
プロプラ系やコーデックへの対応について、bookworm(12) でやっと前進がありました。よいことです。

Ubuntu(固定版)
 言わずと知れた Linux 界の巨人。有名。全方位に優れている。初心者向けとの評判だが、開発やサーバ系も十分にいけそう。
DE が気に入らないなら、対象を「Ubuntu 系」に拡大すれば KDEplasma、Xfce、LXQT 等もある。派生ディストリの数も多くて、選び放題状態。
ただし近年は snap を強く押し付ける傾向があり、ギークにはウケなくなっているように思う。CUI のサーバまで snap を組み込んでいるのはどうかと思います。

MXLinux
 Dirtrowatch No.1 のディストリ。使い易い。コーデック系にも積極的。ノートパソコンとの相性も基本的に良好です。最近は systemd も使えるようになったので「Debian 代替 + アルファ」の感じが更に強くなってきた。ただし近年は本家 Debian が nonfree-firmware をデフォルトで入れるようになってきた。以下のも含めて派生ディストリは全般に本家に対する優位性が薄れていきそうに思う。

Mint
 Ubuntu派生で本家より人気のディストリ。安定しているし使い易い。コーデック系には本家よりも積極的。LMDE (Debian ベース版)もしぶとくやってるようです。
ここに書くコメントは少ないけれど全然問題のない良好なディストリと思います。

antiX
 systemd free 。とにかくメモリー消費が少ない。
2021-夏時点だと、仕上がり具合がやや雑。2022-秋時点だと、我が家のマシン(AMD 3000 シリーズ CPU)ではインストール出来ないようです。段々と仕上がりが雑になっていく印象です。もしかするとうちの機器類(AMD 系)との相性が悪いかもしれない。

Devuan
 Debian without systemd が売りのディストリ。安定しているし良好だけど、systemd free って以外に訴求点が無い。人気は出ない。ただしものはしっかりしている。

Sparky Linux (stable)
 Debian 派生。コーデック系へも積極対応していて、Debian 代替+アルファの要素が強いディストリ。使いやすくノートパソコンへもインストールしやすい。MXLinux と似た立ち位置に見えるが、人気面では大きく水を開けられている。使ってみて、良好な出来栄えの割には人気が無いと思う。

Peppermint
 2022-05 時点でDebian派生に変わりました。前は Ubuntu 派生。
インストーラが Calamares なのでノート PC でクセのあるヤツ(Debian のインストーラだとうまく入らないヤツ)にも入れやすいです。Debian 代替+アルファ。
Sparky と同様。良い出来栄えのわりに全然人気が無い。何故かは分かりません。



** RedHat Fedora 系 **

AlmaLinux
 Redhat のクローン。基本は業務系OSとかサーバ系OS。セキュア、安定性、堅牢性が素晴らしい。
ネット上の高度な情報も豊富。
アプリケーションもひと工夫すれば増やせるようなのでデスクトップも意外とイケル。ただし RedHat の方針に影響されやすく、安定運用が懸念される。

Fedora
 正規の GNOME 版及び Spins から LXDE 版と Xfce 版を入れてみたがいずれも安定していて良好。
アップデートでも問題は発生しない。パッケージもマアマアある方。プロプラ系は排除していない。コーデック系には消極的。対応は出来ます。
3ヶ月ほど更新の安定性を継続してチェックしましたが、問題なかったです。全体としてレベルは高い。
ただしサポート期間やバージョンアップのサイクルが短すぎるのでせわしい。また mozc をパッケージから外してしまったのは残念です。


このグループはおおもとが排他性を強めているため、おすすめできません。





** SUSE 系 **

openSUSE(tumbleweed)
 アップデートは安定していて問題を生じない。
パッケージソフトもそれなりに沢山ある。プロプラ系は排除していないが、コーデック系には消極的。対応は出来ます。
2022-10 現在、X 端末系とエディタを組み合わせると挙動が変。emacs が変な挙動をする。

Gecko (Rolling Release)
 OpenSUSE の派生ディストリ。基本的にSUSEのTumbleweedの特性を引き継いでいる。全体としては安定しているが 2022-10 現在、X 端末と emacs の組み合わせで挙動がおかしい。


SUSE グループはこの先の方向性(RedHat クローン系に参加してみたり、slowroll とかやりだしたり、どこに進むか分からない)が見えない等あるので私は利用を控えたいです。





** Arch 系**

Arch Linux
 思っていたより安定・堅牢です。プロプラ系やコーデック系への対応も良好。使いやすい。
インストールが面倒なのは減点項目です。プリンター利用も設定がやや面倒。
それ以外は良好です。

ArcoLinux
 マイナーなディストリだが割合と使いやすく安定している。コーデックにも積極的です。プリンタを動かすのが、面倒。
ハードウェア対応は良い意味でデリケートさがなくて堅固な印象です。出来栄えが Arch に似ている感じです。見た目(外見)がやや特殊なのは簡単に調整・修正できます。

EndeavourOS
 Arch の派生ディストリ。
安定しています。リポも安定しています。プリンタを動かすのは面倒。人気急上昇中。

Manjaro
 ちょっとクセがある一方で (c) 系に強いという評判らしいです。
プリンタを動かすのが面倒。また、比較すると少しだけ他の Arch 系ディストリよりもハードウェアに敏感。
しかし人気のディストリです。




** その他 **

Slackware、Salix
 もともと a)、b) には強いけど c) はイマイチというのがここでした。しかし最近 Salix が頑張っていて、その余波で(笑)Slackware-15.0 も少し使いやすくなりました。少し。
15.0 系は超安定でかつ野良ビルド等やっても十分いけそうですが、current はいじり回すと長期安定運用が難しいです。
Salix はどうも更新が途絶えているようです。それだとイマイチです。

Clear Linux
 Intel 製の Linux。高速。仕立て方には特徴(クセ)がある。パッケージの品揃えもサーバ系ソフトは独特。
ただし、flatpak サンドボックスが不安定なことがあります。これは時期によります。
このディストリは時たまおかしくなると感じます。長期的に安定運用出来るか、ちょい不安。多分、AMD のマシンだと相性は良くなさそう。







Sec-4.その他のディストリ

 上記以外のディストリで、ちょっとだけ試してみてすぐにやめたディストリとか、試してみようという戦意が喪失したディストリです。
つまり、良いとか悪いとか、好みに合うとか合わないとか、そんな判定以前に試用をやめたディストリです。


PCLinuxOS
 こっちはベスト10の少し下だけど人気がありそうです。そもそも去年の秋頃には、「次は PCLinuxOS 試してみよう」なんてウェブサイトに書きました(汗)。が、撤退です。

ようするに、全般的に分かりにくいです。

  

elementary、Zorin
 こっちはインストール用のISOをダウンロードする画面で、撤退です。
いきなり「あんた、幾ら出す?」って画面です。いや、あれを見てなお「俺はただで使わせてもらうぞ」って言いにくいです。
Distrowatch を見ると「free」って書いてあるので無料が基本だとは思うんですけど・・・・
なんとなく、そこで気後れして試用は諦めました。ちょっと、近づき難いディストリです(汗)。
自分が常用するディストリだと寄付を心がけていますが、一時的お試しではそこまでやる気がありません、汗。




以上です。